安倍首相 あなたは、どこの国の首相なのか?

 

 8月6日 安倍首相は、核兵器被爆国でありながら世界が推し進めようとしている「核兵器禁止条約」については式典の総理大臣挨拶ではふれなかった。その後の被爆者との懇談で「参加しない。批准しない。」とのありえない立場を表明し参加者の怒りと落胆がひろがっている。

 8月6日22時19分の 朝日デジタル記事から 核と人類取材センター・田井中雅人氏の手紙を記載します。 

内閣総理大臣 安倍晋三

 広島平和記念式典でのあいさつで、あなたは昨年に続き、今年も核兵器禁止条約に一切触れませんでした。「核兵器使用の犠牲者(ヒバクシャ)と核実験被害者の受け入れがたい苦痛と被害を心に留める」とうたった条約が122カ国の賛成で採択されてから1年余り。被爆地には怒りと落胆が広がっています。

 式典後、被爆者代表の要望を聞く会で、あなたは条約に署名・批准する考えはないとの立場を改めて示しました。昨年、「満腔(まんこう)の怒り」を表明した広島被爆者団体連絡会議の吉岡幸雄(ゆきお)事務局長(89)はこう嘆いています。「昨年と同じことですよ。全然受け入れられるような状況じゃない。わが国は被爆国だということを根っこに持ってほしい」

 条約に背を向け続ける、あなたのかたくなな姿勢は、式典あいさつで誓われた「橋渡し役」を果たすには不適格と映ります。

 残念ながら、渡す「橋」の軸足が「核の傘」を差し掛ける同盟国・米国側だけに置かれていることが、国際社会にも被爆地にも見透かされているようです。核兵器の非人道性の象徴である核被害者に、もっと寄り添う姿勢を示すことが、実質的な「橋渡し役」の条件ではないでしょうか。

 核禁条約のモデルとなった対人地雷禁止条約クラスター爆弾禁止条約では、日本政府は米国の反対を押し切って署名・批准しました。それぞれ当時の小渕恵三外相、福田康夫首相の人道的な政治決断でした。

 最後に、条約を5月に批准し、きょうの広島の式典に参列したオーストリア外務省のトーマス・ハイノッチ軍縮・不拡散局長からのメッセージを記します。

 「オーストリアは憲法核兵器を禁止しているので、核禁条約もスムーズに批准できました。もちろん条約に参加するかどうかは日本政府と国民が決めることですが、大いに関心を持っておられることは承知しています。条約はすでに国際社会で現実のものとして受け入れられつつあり、発効は時間の問題ですよ」

 合わせて、こちらもお読みいただけると幸いです。 http://webronza.asahi.com/politics/articles/2018080100008.html別ウインドウで開きます

 

 (核と人類取材センター・田井中雅人)