原発汚染水の海洋放出は認めない

 澤藤藤一郎さんのホームページから 転送します。 

 漁民のみならず福島県民の反対を押し切って、東京電力福島第1原発の敷地内に貯蔵されている「汚染水」が海洋放出されることになった。海洋の汚染は、国際問題でもある。けっして、どこの国の原発もやっていると安易な問題にしてはならない。

 全漁連の会長が、「絶対に反対」「この立場にいささかの揺るぎもない」と言っている。一昔前は、農村も漁村も保守の地盤だった。今や、農民も漁民もバカバカしくって自民党の支持などやってはおられない。こういう事件を通して、政権与党が誰の味方なのか、あぶり出されてくるのだ。

 東京電力は2015年に福島県漁業協同組合連合会(県漁連)に対し、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と「約束」していた。が、この約束は、あっさりと破られ水に流された。流され失われたものは、汚染水と約束だけではなく、国家への信頼であり、自民党への支持でもある。

 国もメディアも、問題は「風評被害」だと言う。漁民や沿岸地域の被害は、実態のない「風評」に過ぎないと決めてかかっているのだ。

 つまり、排出される汚染水とは、トリチウム以外の核種を含まない。そのトリチウムの毒性は弱い。しかも、安全基準の40分の1の濃度に希釈して、30年~40年かけて徐々に排出するのだから騒ぐ方がおかしい、と言わんばかり。麻生などは「飲んでもなんてことはないそうだ」と調子に乗っているが、放射性物質に汚染された水を海洋に捨てて本当に大丈夫なはずはない。

 実は、排出される汚染水には、トリチウム以外の核種も含まれている。そして、どうしても除去しきれないトリチウムの人体への影響は未知というべきなのだ。

現在、貯留されている汚染水量は約120万㎥。この中に、約860兆ベクレルのトリチウムだけでなく、セシウム137、セシウム134、ストロンチウム90、ヨウ素129などの放射性物質が残留し、7割以上のタンクの水が安全基準を超えている(原子力市民委員会)。

 政府・東電はこれを認めた上で、ALPSで再処理をしてトリチゥム以外の核種を除去して海洋放出を実行するという。えっ? なんですと。一度ALPSを通して除去できず、汚染水に残った核種が、再処理すればなくなるというのか。本当だろうか。

「東京電力が2020年12月24日に公表した資料によると、処理水を2次処理してもトリチウム以外に12の核種を除去できないことがわかっています。2次処理後も残る核種には、半減期が長いものも多く、ヨウ素129は約1570万年、セシウム135は約230万年、炭素14は約5700年です」
「ALPS処理水と、通常の原発排水は、まったく違うものです。ALPSでも処理できない核種のうち、11核種は通常の原発排水には含まれない核種です。通常の原発は、燃料棒は被膜に覆われ、冷却水が直接、燃料棒に触れることはありません。でも、福島第1原発は、むき出しの燃料棒に直接触れた水が発生している。処理水に含まれるのは、“事故由来の核種”です」(自民党処理水等政策勉強会・山本拓議員)

 第1原発敷地内のタンクに貯蔵されている汚染水の7割には、ALPSで除去できないトリチウム以外にも、規制基準以上の放射性物質が残っている。この事実が18年に発覚するまで、政府と東電は「トリチウム以外は除去できている」と言って、国民を欺いてきた。透明性は希薄である。信頼性は著しく低い。

ここで頼みの綱となるALPS(汚染水を浄化処理する多核種除去設備=ALPS)だが、実は2013年に東電が導入後、現在まで8年間も「試験運転」のままなのだという。いったいどういうことだ。

 4月14日の参院資源エネルギー調査会で、共産党の山添拓議員が問題を取り上げた。「トリチウム以外は除去できているのか」と追及。新川達也経産省審議官は「タンクにためた水の約7割には、トリチウム以外にも規制基準値以上の汚染物質が残っている」と認めた。

 また山添は、アルプス処理施設が2013年の稼働開始後、法律で求められる検査がされていないのではと質問。原子力規制委員会の更田豊志委員長は「使用前検査の手続きを飛ばしているところがある」と答えている。政府は海洋放出を「安全」と喧伝するが、それはALPSが願望のとおりの除去作用あってのこと。その“頼みの綱”の性能はまだ「確認中」。ハッキリしてはいない。これが、アンダーコントロールの正体なのだ。